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しらい…東京都出身、東京都在住。好きなアーティストはFoZZtone、渡會将士、東京事変、椎名林檎、サカナクション、日食なつこetc…

​収録日:2020年7月25日

――初めて行ったライブは何でしたか?

「今回にあたって調べたんですが、ポルノグラフィティの2007年のさいたまスーパーアリーナでの公演が初めてでした。15歳、高校1年生の時です」

 

――そのライブは友達と行ったの?

 

「そうですね。人生で初めて買ったCDが、小学生の時にお小遣いで買ったポルノグラフィティの『メリッサ』なんです。アニメ『鋼の錬金術師』の主題歌になっていて、イントロがベースで入るんですよね。それを聴いて“なにこれ、超カッコ良いじゃん!”って小学生ながら思って(笑)。それ以来ポルノが好きで、中学生になったら同志を見つけたんです。それで一緒になってわーきゃー騒いでた友人と“高校生になったら一緒にポルノのライブに行こうね”と言っていて、なので高校生になってから最初に開催された全国ツアーに行きました」

 

――その後は頻繁にライブに行ってました?

 

「いえ、ポルノグラフィティありきのライブというか、ポルノがツアーをやったら東京か関東近郊の公演に行くみたいな感じでしたね。その頃は他にいわゆるロキノン系というか、BUMP OF CHICKENやRADWIMPSやASIAN KUNG-FU GENERATIONとかを聴いていたんですけど、思い返してみるとバンドのサウンドとかプレイヤーとしての凄さとかぜんぜん意識してなくて」

 

――いや、いきなり意識しないよ。私は未だによく分かってないもん(笑)。

 

「10代の頃の自分が音楽に対しての熱量を持つ原動力になっていたのって、やっぱり歌詞だったんですよね。歌詞に共感ができるというか、言葉の持つ力というか。だから歌詞でピンとこないと聴かないというか」

 

――私もなんだけど、たぶん文系の聴き方なんだよね。

 

「なんか二極化しないですか、サウンド重視派と歌詞を聴くタイプと。私は一曲での文学性を重視しちゃって、中学生の私に響いたのはポルノグラフィティだったんです。作詞するメンバーが2人いるので、それぞれによってテイストが違って。沁みる歌詞に感動したり、中学生にとってはちょっとエッチな歌詞にドキドキしたりするのが私の青春時代だったんです。恥ずかしながら歌詞を書き写してみたり……やりませんでした?(笑)」

 

――やった(笑)。

 

「ノートにびっちり書いたり、教室の机に書いて怒られたり(笑)。あくまで歌詞ありきで音楽を聴いていて、中学3年生くらいになってマセ始めると今度は椎名林檎とか東京事変とか聴き出すんですけど、“アナーキー”の意味とかを辞書で調べてました(笑)」

 

――やっぱり言葉なんだね。

 

「今まで聞いたことのないこんな言葉があるんだ、この漢字はこんな読み方をするんだって調べたりして。中学2年生の病が俺をそうさせたんだと思うんですけど(笑)。椎名林檎も東京事変も今は純粋に好きですけど、当時はアンニュイな大人の女性の曲を聴いてる自分カッコ良いみたいなのもあって(笑)」

 

――背伸びしたい年頃だしね(笑)。

 

「その背伸びしたい癖が尾を引いて、大学生くらいまで続くんです(笑)。大学生になって中学生とか高校生の時に好きって言ってたバンドの名前を挙げると、“ああ、アレね。昔聴いてたわー(笑)”勢が出てきて、そういうのに気圧され始めてしまったんです。私はまだまだポルノもバンプもラッドも好きで、今なら胸を張ってカッコ良いじゃんって言えるんだけど、その時の私にはそれを跳ね除ける心の強さが無くて。それで情けない話ではありますが、いったい何を聴いたら正解なのかと思い始めてしまったんです。ずっと同じものを好きじゃダメなのか? 好きとは何か? みたいな迷走に入るんですよ。アイデンティティークライシスがその10代後半で起きてしまって。好きな音楽を馬鹿にされた経験が、私を迷子にさせたんですよね」

 

――その大学時代はライブには行ってたの?

 

「ポルノの東京近郊でのライブには変わらず行ってました。ただ、ポルノくらいになるとやっぱりアリーナクラスのとても規模の大きい会場になってしまって、音楽それ自体に感動するというよりは、すごい演出を観てグッズを買って生ポルノを拝むみたいなイベントという認識でしたね。ポルノ以外だと、同じく好きだったアジカンのNANO-MUGEN FES.に母親と行ったのが初めてです」

 

――それはどっちから誘ったの?

 

「私がもともとアジカンを好きだったんですけど、学生にはチケット代が高くてなかなか手が出なくて。そこで母親に薦めて好きになってもらって、スポンサーになってもらおうと思ったんです(笑)。それにまんまと引っかかってくれて一緒に行くことになったんですけど、それまでにワンマンライブしか行ったことがなくて、どのバンドがいつ出てくるとかぜんぜん分かってないんですよ。冷静に考えればアジカンがトリだって分かるんですけど、それすら知らなくて。最初のうちは会場の熱気でうわーってなってたんですけど、一向にアジカンが出てこない。それでライブ耐性のない学生と主婦は疲れちゃって、とうとう母親が音を上げてアジカンを待たずに帰りました(笑)。初めてのフェスで失敗してしまって、しばらくライブからは遠ざかってしまっていましたね。その後しばらくして行ったのがFoZZtoneです」

 

――ってことは、フォズで初ライブハウス?

 

「そうですね、2013年の赤坂BLITZでのワンマンライブです。行く決め手になったのはワンマンだったからですけど(笑)。でも、私はFoZZtoneの曲で初めて聴いたのが『口笛男』だったんですけど、それまでずっと何を聴いたら良いのか、好きになったら良いのか迷子になっていた中で、“私はこの先、誰に何を言われてもこの曲を好きでいられる自信がある”って思ったんですよ。私の人生の中で、ずっと忘れられないで大切にできる本のような存在に初めて出会ったと思ったんです。『口笛男』は歌ってくれないかもしれないけど、でもそれでもライブに行こうって思えたんですよね。音ももちろん好きでしたけど、何より渡會さんの創る詞の世界が素晴らしいなと思ったんですよ」

 

――詞の世界に対する想いは一貫してるんだね。

 

「FoZZtoneって曲調が一定じゃないじゃないですか。でも私は、この人が書く詞ならどんな曲でも興味があるわって思ったんです。色んな人の曲を聴いていると、“こんな気持ちの時もあるよね”みたいな歌詞に対して“いや、私には無い!!”ってなることが結構あるんですけど(笑)。でも、渡會さんの詞にはそういうことがないんですよね。全部が自分に当てはまるわけじゃないですけど、そういうこともあるだろうなとか、なるほどって納得できる。“ねぇわ!!”とはならない(笑)。渡會さんの詞は感情だけじゃない…風景描写が多いじゃないですか。切り取り方にハッとする、みたいなのが。だから感情面に共感できなかったとしても、そのカメラワークが好きなんだろうな、きっとずっと愛し続けられるわって。それがきっとトラウマを振り払ってライブハウスに行けた原動力かもしれないですね」

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